日経ビジネスからの引用

「シェールガスの環境問題」の具体的な中身
地下水汚染やメタンガスの漏洩だけではない2012年4月23日(月)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20120418/231149/
大場 紀章氏

意外に知られていない環境問題の中身
今回は、最近一般の方でも注目度が高くなってきた「シェールガス」の環境問題に焦点を当てたいと思います。
 シェールガス開発に伴う環境問題には、主に以下の5つが挙げられます。
(1)掘削に用いられる化学物質(潤滑剤、ポリマー、放射性物質など)およびメタンガス(天然ガス)などによる地下水の汚染
(2)採掘現場から空気中に漏洩するメタンガスによる健康・爆発・温暖化リスク
(3)温暖化問題に対する総合的な影響(メタンガス漏洩・開発に伴う森林伐採・再生可能エネルギーの導入抑制効果・安価なガスによる消費拡大)
(4)大量の水を使うことによる地域の水不足リスク
(5)排水の地下圧入による地震発生リスク
以下は続きを読む以降に私の勉強用にペースト。

日経新聞4月21日版にも一面に「シェールガス革命 企業動く」と米国の情報がトップ扱いとなっていた。
「革命」ということばを使用するほど、シェールガスについては日本にとっても無視できない。

「日本の天然ガス輸入価格の高さを電力業界の怠慢」(東京新聞)
 ドイツはパイプラインで輸入するロシア産と、LNGで輸入するカタール産などを競わせて値引きを迫れるが、日本には産ガス国との間を結ぶパイプラインがない。 電力業界は高値の理由をこう説明しているが、同じ条件下の韓国は日本企業が投資したロシアのサハリン2から日本の半値以下で輸入し、3年後にはガス輸出国に転じる米国とも安値で契約済みだ。

日本のLNG価格は(先物市場、要するに予測不可能で、恣意的な相場に支配される)原油連動で決められている。 その結果、日本の購入する米国内LNG価格と比較して2011年前半で3倍に広がり、最近の日経報道で7倍に広がっているとのこと。 異常ですね・・・
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/4124.html

米国のガス価格が乱高下しやすい市場であったが、2012 年1 月以降、10 年ぶりの低水準で安定して推移している。
http://oilgas-info.jogmec.go.jp/pdf/4/4634/1203_out_e_us_exports_shalegas.pdf#search='LNG価格国際比較 2012'

・・・・・・延々と続く
地下水汚染やメタンガスの漏洩だけではない2012年4月23日(月)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20120418/231149/
大場 紀章氏
(続き)
 シェールガスの採掘に使われる水圧破砕(ハイドロフラクチャリング)という技術は、化学物質を添加された大量の水を地下に圧入することで、ガスが存在する地層にヒビを入れてガスを取れやすくします。その際に使用した水の一部は、地上に戻り一時的に作られたため池に入れられ、処理をして再利用されるか、地下や川などに捨てられます。これらのプロセスにおいて、(1)(4)(5)のような水質汚染・水不足・地震のリスクが発生します。

 また、シェールガスの開発は、従来型の天然ガス田に比べ一つの井戸から生産されるガスの量が少ないので、結果として比較的多くの井戸を掘ることになります。そのため、ガスの漏洩や森林伐採といった(2)(3)の問題が、従来型の天然ガスに比べ発生しやすくなります。

もう一つの特徴は、シェールガスは現時点で米国のガス価格が安価であることに貢献していると考えられているため、安価な天然ガスが再生可能エネルギーの開発を鈍化させたり、経済成長に貢献して結果的に温室効果ガスの増大につながったりするのでは、と懸念している人たちがいます(3)。

 実際、2010年以降米国における風力発電の導入量は激減しました。これはシェールガスによって天然ガス価格が下落したことに原因があると考えられています。米国経済の持ち直しも、シェールガスが一役買っているという見方があります。

EPA(米国環境保護庁)が地下水汚染との関連を言及
 これらの問題の中でも、最も身近で強く懸念されているのが、(1)の中の化学物質による地下水の汚染です。水圧破砕法は60年以上前から米国で少しずつ発達してきた技術ですが、試行錯誤の末、効率的な生産のために付加される化学物質の種類が徐々に増えていきました。

 しかし、用いられる化学物質は企業秘密で非公開とされてきたため、環境影響評価の調査を行うことすら困難で、たとえネガティブな調査結果が出たとしても業界や政府の圧力によってもみ消されてしまってきたといわれています。最近になってシェールガスとその環境問題に対する注目が高まってきたこととともに、研究者や米国環境保護庁(EPA)の努力の結果、使用している化学物質の開示や、環境影響評価が広く行われるようになりました。

 2011年12月、ワイオミング州パヴィリオンにおける調査に関して、EPAは連邦政府として初めて水圧破砕法と地下水に含まれる化学物質に因果関係があり得る(likely)とする報告書草案を発表しました。

 検出された化学物質として、ガソリン、軽油、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、ナフタレン、イソプロパノール、グリコールなどが挙げられています。ベンゼンなどは、発がん性があることでも知られていますが、サンプルの中には米国の環境基準を超える濃度のものもありました。

 これらの化学物質は、採掘時というよりは使用済みの汚染水を貯蔵するため池からの漏洩や、汚染水を地下に圧入廃棄する段階で汚染が発生している可能性が高いと考えられています。

この結果に対し、ガス産業界は水の層とガス層の深さの違いや、技術的に管理は可能であると反発していますが、「シェールガスバブル」に便乗して参入した中小ガス企業が、劣悪な管理で採掘して環境汚染を引き起こしている可能性は十分にあると思われます。一部地域では飲めなくなった水の代わりにガス会社が水を配給しているところもあります。まだまだ、因果関係をめぐる論争は、始まったばかりです。

放射性物質の影響も論争に  
 使用されている化学物質の中には、放射性物質もあります。発生する放射線によって、地下の様子を計測するのが目的で、日本でも原発事故で有名になった放射性ヨウ素131などが使われています。

 2011年4月、EPAはフィラデルフィアのシェールガス田近くの地下水に、ヨウ素131が含まれていることを発見しました。当初、ガス産業と良い関係にある地元自治体は、このヨウ素131は日本の原発事故の影響だという見方をしましたが、その後数カ月経っても減少がみられないため、その見方は却下されました。現在も今後の処置に関して論争が続いています。

 メタンガス自体が地下水に混入してしまうという問題は、2010年に公開された「Gasland」というシェールガスの環境問題を扱ったドキュメンタリー映画の中で、台所の蛇口から炎が上がる様子が紹介され、話題を呼びました。YouTubeでも見ることができます。また、シェールガス田の付近では、空気中のメタンガス濃度が高いという事がわかってきています。2011年に発表されたデューク大学の論文では、シェールガス田付近の空気中メタンガス濃度が引火レベルまで高いというデータが示されています。

 これらのメタンガスの問題は、確かにシェールガス開発との因果関係が疑われる場合もありますが、ただ気をつけなければならないのは、地下水や空気中に天然ガスが混ざることは、シェールガス開発がなくても広く自然に起き得るという点です。地面や池などから天然ガスが出ている地域は世界中にあります。

 メタンガスを含む水を飲んだり、空気中のメタンガス濃度が高かったりした場合、どのような健康被害があるかについては、まだわかっていないことが多いようです。EPAは2011年12月、地下水にメタンガスの混入がみられたペンシルバニア州ディモックの住人に対し、「ただちに健康に影響が出るものではない」との電子メールを送付しましたが、翌月に主張を変えて、じん速な対応を取るように求めました。引火性のガスを含む水を飲むというのは気持ちのよいものではないでしょう。

 温暖化問題の観点からも議論はあります。メタンガスは、二酸化炭素に比べて21〜72倍(タイムスケールによって異なる)の強い温室効果があり、少しの漏洩でも比較的大きな影響が出ます。2011年5月、コーネル大学のHowarth教授は、シェールガスは燃焼時の二酸化炭素だけでなく、採掘時のメタン漏洩も含めると、トータルで石炭に匹敵または超える温室効果があるとする論文を発表し、注目を集めました。Howarthの見積もりに対し、いくつかの研究者がその反論を発表し、論争を引き起こしています。

環境規制による価格上昇リスクも  
 シェールガス開発に伴う森林伐採、安いガス価格による再生可能エネルギーの抑制の効果、消費拡大効果が温暖化問題に及ぼす影響については、必ずしもシェールガス特有の問題とは言えない上に、議論が複雑になりすぎると思われるので今回はこれ以上は触れませんが、米国や今後シェールガス開発を行う国が本気で温暖化問題に取り組む場合、懸念すべき論点になるかもしれません。

 (4)の水不足の問題は、現時点の米国では、水の再利用率を高めるなどの対応によって大きな問題となってはいませんが、水不足の地域に多くのシェールガス資源が確認されている中国や、比較的米国より水資源が貴重な欧州では、問題となる可能性があります。

 (5)の地震の問題は、最近になってシェールガス開発との因果関係を示唆するデータが増えてきており、米国だけでなく現在開発を推進するかどうか検討中の英国においてもホットな話題です。今後、情報がまとまってきたときに機会があれば説明させていただくことがあるかもしれません。

 いずれにしても、これらの環境問題のいくつかは、浄水設備をつけるなど技術的な対策である程度、環境影響を抑えることが可能です。ただし、そのためには厳しい規制をかけて環境対策を義務付ける必要があります。そして規制の強化は採掘コストの上昇につながります。

 本質的に対策が困難なそれ以外の化学物質の地下水混入などに関しては、そのネガティブな影響をどう捉えるか(原子力や石炭よりはましと考えるか、など)にかかっています。

 既に、フランスとブルガリアでは、環境問題の懸念から国としてシェールガス採掘を禁止しました。米国のいくつかの州や南アフリカのように、環境影響評価が定まるまでは開発を行わないとしている地域もあります。 環境問題も、シェールガスの将来を考える上で決して無視できません。

 将来的に日本が輸入することになるかもしれないシェールガスについて、その環境リスクについて少しでも関心を持っていただければ幸いです。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20120321/230119/?P=1
シェールガスに期待し過ぎてはいけない
持続的と考えられてはいない米国のLNG輸出
大場 紀章  2012年3月26日(月)
 エネルギーの話題は、読者の関心のポイントや好き嫌いが実に様々で、議論のターゲットを絞るのが大変難しいです。本来は、短期の課題と長期の課題を分けて議論するべきです。しかし、例えば原発再稼働の問題をとっても、今年の再稼働の有無の判断が長期にも影響を与えると思われるため、容認派・反対派の両者にとって死活的問題となり得て、長期・短期を簡単に切り分けることができません。このように、直近のことを決めるにも、長期の話をせざるを得ません。しかし、長期の議論が直近の事情に引きずられてしまい、本来の長期的な背景の部分がごっそり抜け落ちていることが、私の基本的な問題意識です。

 今回は、最近少なからず目にすることのある、シェールガス(頁岩=シェールの中に残留した天然ガス)について取り上げたいと思います。

 「シェールガスのお陰で米国ではガスがとても安く、それを日本に輸入できればいいのではないか」といった話題に何となく期待している方、またはその構想に一抹の不安を抱いている方に向けて、私の見方を紹介します。シェールガスのことを全く聞いたことがない方は、大変申し訳ないですが日経ビジネスオンラインに優れた関連記事が多数ありますので、そちらを参考にしてください。

 シェールガスをテーマにするといっても、採掘時の環境問題や開発企業の経営上の問題、将来的な生産量、中国やポーランドなど米国以外での生産の広がりなど議論しなければならないことは山ほどあり、そこにご興味を持つ方もいらっしゃると思います。しかし、今回はすべてをすっ飛ばして、米国のシェールガスを日本が輸入するとことの意味に的を絞ります。

日本の7分の1、米国の天然ガスの安さは魅力
 現在、日本が輸入している天然ガス(LNG:液化天然ガス)の価格と、米国内での天然ガス価格ではおよそ7倍の開きがあります(図1)。であれば、米国からその安いガスを輸入できれば、原発が止まってLNG購入価格の高騰にあえぐ日本にとっての救世主になるのではないか、と淡い期待を抱きたくもなりますが、事態はそう単純ではありません。

図1:2004年からの天然ガス価格の推移


日本エネルギー経済研究所、国際通貨基金、米エネルギー省エネルギー情報局の統計より

現在、米国政府に認可されているLNG輸出プロジェクトは8つあり、計画輸出量の総量は年間約1億トンと、米国のガス消費量の2割に匹敵します。そのうち、非FTA締約国に対する輸出認可が下りているのは今のところ1件(Sabine Pass)のみです(図2)。Sabine Passのプロジェクトは、英国、スペイン、インド、韓国(3月にFTA発効)などの国々に向け年間1600万トンが販売されることが決まっています。

これらの案件が生まれてきた背景には、もともと米国LNGの輸出ではなく輸入増大をあてこんでLNG受入基地を建設した事業者が、シェールガス生産の拡大により輸入量が激減したため開店休業状態となり、やむなく液化設備を増設し、内外価格差を利用して輸出業者になろうとしている、という事情があります。

図2:北米LNG輸出案件

連邦エネルギー規制委員会の資料、各種報道より作成

米国の認可とは別に、カナダにもいくつかのLNG輸出案件があります。しかし、コストなどの条件で米国案件には見劣りし、プロジェクトが生まれては消えています。また、カナダではオイルサンド(原油を含んだ砂岩)の生産のための安価な天然ガス供給確保が課題となっており、そちらへの供給と競合してしまうという別の問題があります。

米国ではLNGを輸出すべきかの議論に
 一方、日本ではあまり知られていませんが、米国では「そもそもLNGを輸出すべきかどうか」が議論されています。8つの輸出案件のなかでSabine Passしか輸出認可されていないのもそうした事情を反映しています。もし、輸出しても余りあるほどのシェールガスが生産されるのであれば、このような議論は発生しないはずです。裏を返せば、懸念材料があるということです。

 これまで、シェールガス生産量は順調に伸びてきましたが、必ずしもこの傾向が続くとは限りません。シェールガス生産の急増は、もともとは技術革新によるものですが、それ以外にも過剰期待によって産み出されたバブル的な過剰供給の側面が多分にあると指摘されています。1MMBtu(英国熱量単位)当たり2.3ドルという現在の価格水準は、シェールガス生産の採算分岐価格(4〜7.5ドルと言われる)を大きく下回っており、ガス販売自体では採算が取れていないと考えられます。実際、2012年1月、シェールガス米国第2位のチェサピーク社はできるだけ早い時期までにガス生産量を16%削減すると発表、ほかにもコノコフィリップス社、BG社、エンカナ社などがシェールガス生産計画の縮小を相次いで発表しています。

米国エネルギー省は資源量見積もりを4割下方修正
 また、米国エネルギー省(DoE)による米国のシェールガス資源量見積もりは、2010年から2011年にかけて2.4倍に増えましたが、2012年は逆に4割以上下方修正されています(図3)。これも、事前の過剰な期待による見積りが、実際に開発が進むにつれ現実が明らかになり、修正されたことを示しています。

図3:DoEの米シェールガス資源量見積もり

需要面にも懸念があります。米国では2020年までに老朽化した石炭火力発電所の約12%が停止することになっていますが、環境規制によってその多くが天然ガス火力に置き換えられることになっています。2020年までに新設されるガス火力発電所によるガス需要の増加量は、年間1.6〜3.5tcf(兆立方フィート)と予測されています<注>。これは、現在の年間消費量の7〜16%に相当します。

<注>ICF Internationalは年間1.6〜2tcf、デロイトは3.5tcf、ドイツ銀行は3tcfと予測

 それでも、DoEは今年発表の最新のエネルギー見通しで前年までの輸入見通しを一変させ、北米全体の天然ガスは2016年から純輸出に転じるとしています。一方、英国のオックスフォードエネルギー研究所が1月に発表した報告書では、米国のガス生産量やアジアのガス需要の高低により4つのシナリオを設定し、北米の天然ガス輸出入の見通しを試算しています。その4つのシナリオのうち3つでは全期間で純輸入となり、唯一LNG輸出があるシナリオでも輸出は数年間だけで再び輸入に転じてしまいます(図4)。

図4:各機関による北米天然ガスのネット輸出入見通し


LNG輸出事業モデル自体にも懸念があります。既に述べたように、今挙がっているLNG輸出案件は、元はLNG輸入に失敗した事業者の生き残りを賭けた経営多角化であり、事業者自体はガス生産者ではありません。そのため、事業者は基地使用料と液化コストを取るだけのビジネスで利幅が狭く、さらに地域間の価格差だけに依存しているという非常にハイリスクなビジネスモデルです。

 例えば、Sabine Passの案件では、北米ガス価格(1MMBtu当たり2.3ドル)の15%の基地使用料に固定の液化コスト3ドル、それに輸送費、保険費を加えると購入価格は約9ドルとなります。確かに日本の現在のLNG輸入価格である約16ドルと比べて安いですが、昨今の価格変動を考えるといつ差がなくなってもおかしくありません(図1)。おまけに、公共の利益に反すると判断されれば、政府から輸出許可の取り消しもあり得るという政治リスクもあります。こうした理由から、大手ガス企業はLNG輸出事業には参入する気配もなく、米国の投資銀行も投資に慎重な姿勢をみせています。

 このように、米国からのLNG輸出が必ずしも持続的と考えられてはいないことが分かります。

価格上昇リスクを過小評価?
 DoEは、LNG輸出が米国天然ガス価格に与える影響について検討した報告書を発表し、その中で24〜54%の価格上昇があると見積もっています。これは無視できない上昇ですが、現在の価格が非常に安いことを考えれば、著しく大きいとも言えません。ウッドマッケンジーやIHSのようなエネルギー専門機関も、LNG輸出による価格への影響は軽微だとの見解を表明しています。

 しかし、こうした見通しは、ガス価格の低迷にあえぐガス生産者業界の声を代弁しているのかもしれず、リスクを過小評価している可能性があります。実際、ガスを大量に購入する化学、電力、製造業、アルミなどの産業界の懸念は根強く、特に雇用力の大きい製造業を中心に地元国会議員に対して強い圧力をかけています。

 また、安全保障上の議論もなされています。非FTA国に向けてLNG輸出を認可することは、日本と同じように高いLNGを購入している韓国、台湾、中国に向けて輸出することを意味しますが、将来軍事的に敵対する可能性のある中国に対して、戦略物質とみなせるLNGを供給することは国家安全保障上問題である、といった議論です。

 2012年1月4日、エドワード・マーキー下院議員(民主党)は、米国エネルギー省スティーブン・チュー長官に対し、LNG輸出許認可を再考するように進言する書簡を送りました。さらに2月14日にはLNG輸出認可を2025年まで差し止めさせるなどの内容を含む2つの法案を下院に提出しています。

 一方、エネルギー省の石油・天然ガス局クリストファー・スミス副次官補は、2月24日チュー長官の指示により書簡に回答し、エネルギー省は許認可権を価格コントロールの手段としては考えていないとの立場を表明しました。

 とはいいながら、チュー長官自身、価格上昇の影響の懸念を表明しており、LNG輸出の影響評価が終わるまでは決断をしないと発言しています。

お金さえあれば買えるものではない
 2月22日、我が国政府は米国からのLNG輸入に向け米政府と協議をしており、今春予定している日米首脳会談で合意できるように調整していることを明らかにしました。Bloombergが報じたところによれば、日本はCameron(計画:年間1200万トン)、Cove Point(計画:年間782万トン)、Freeport(計画:年間1320万トン)から輸入しようとしており、経済産業省の安藤資源燃料部長は合計3000万トンを超えるこれらの供給力のうち2割の600万トンが輸入されれば、日本の総ガス需要の約1割を占めることになると言いました。ただし、輸入開始時期は早くても2015年以降になると考えられます。いずれにせよまだ数年間は何の足しにもなりません。

 しかし、これまで述べてきたように、今の米国にとってこれ以上LNG輸出を認可することは、簡単ではありません。天然ガスを輸出することで得られるメリット(販売量増加と価格上昇によるガス事業者の利益拡大、ガス開発投資増、日本などの輸出先の景気下支え)と、デメリット(国内ガス価格上昇、化学・製造業等の雇用減、国家安全保障リスク)を比べて、総合的に国益にかなうかどうかを見極めなければなりません。

 オバマ大統領は、輸出を倍増して雇用を拡大する方針を掲げていますし、現在米国ではガソリン価格が上昇し、中間選挙を控えたオバマ大統領にとってエネルギー価格はセンシティブな問題になっています。輸出を認可するハードルはかなり高いと思われます。そうなると、日本への輸出認可合意には何らかの政治的対価を求められると考えるのが当然ではないでしょうか。LNG輸入を取得した韓国も、FTA締結という対価を既に払ってきたと言えるでしょう。

 そうした国際政治上のリアリティを考慮に入れず、安いならただお金を払って分けてもらえばよいと考えてしまいがちなのは、日本のエネルギー議論のナイーブでとても危うい部分かと思います。もし米国からのLNG輸入を期待するならば、積極的な日本側からのトレードオフ提案を伴っているべきです。問題は、あまりに外交力のない今の日本にめぼしい交渉カードが見当たらず、足元を見られてどんな厳しい要求を飲まされるかわからないということです。おまけに要求を飲んだ上でも、実際に安いLNGが長期的に輸入できる保証はありません。

 現在の米国の安いガス価格は確かに魅力的に見えますが、ただそこだけを見て安易に「シェールガスがあるから大丈夫」などというのは短絡的に過ぎるのではないでしょうか。エネルギーはお金さえあれば買えるものではないのですから。

大場 紀章(おおば・のりあき)
1979年生まれ、愛知県江南市出身。2008年京都大学大学院理学研究科博士後期課程単位取得退学。株式会社テクノバ研究員。ウプサラ大学物理・天文学部博士課程グローバルエネルギーシステムグループ在籍中。専門は、化石燃料供給、エネルギー安全保障、無機物性化学。テクノバは、エネルギー・環境、交通、先端技術分野の調査研究を行う技術系シンクタンク。
原発再稼働の是非を巡る議論がとても盛んになっています。この問題は、私にとって既にエネルギーの問題を超えて、社会の意思決定とその責任をめぐる民主主義の構造問題というように見えています。どう転んでも大きな禍根を残すだろう現在のこのジレンマは、全体にかかわる大事な意思決定をしなければならないこのタイミングに、リーズナブルな決定ができて自分たちが信任できる政府を築いてこれなかった私たちの不幸である。現時点ではそう指摘するに留めたいと思います。

Shale gas
http://en.wikipedia.org/wiki/Shale_gas
https://www.google.co.jp/search?q=hydrofracturing&hl=ja&prmd=imvns&tbm=isch&tbo=u&source=univ&sa=X&ei=kJ2UT7OJMoHKmQXBxoD4AQ&sqi=2&ved=0CEkQsAQ&biw=1280&bih=827&sei=_Z2UT6n5PISImQWt3MXWAQ
Shale gas issues
United States: Shale Gas Issues: Squeezed Between Necessity and Reality
14 February 2012
U.S. Shale Gas Exports Face Hurdles, Former Exxon CEO Says
http://www.bloomberg.com/news/2012-02-10/u-s-shale-gas-exports-face-hurdles-former-exxon-ceo-says.html
シェールガスの採掘に使われる水圧破砕(ハイドロフラクチャリング)技術は、化学物質を添加された大量の水を地下に圧入することで、ガスが存在する地層にヒビを入れてガスを取りやすくする。
Hydraulic fracturing
http://en.wikipedia.org/wiki/Hydraulic_fracturing
Hrizontal drilling
U.S. Shale Gas Exports Face Hurdles, Former Exxon CEO Says
http://www.bloomberg.com/news/2012-02-10/u-s-shale-gas-exports-face-hurdles-former-exxon-ceo-says.html
Political constraints and concern production gains at shale fields aren’t sustainable will hinder the development of liquefied natural gas export plants in the U.S..
Production of shale gas in China would be a “real game changer,” the former executive added. “China is run by engineers, it’s not run by politicians.”

http://www.bloomberg.com/news/2012-01-31/exxon-says-two-polish-shale-wells-were-not-commercially-viable.html
Shale exploration is a very high-cost and high-risk business.
"Poland is cited among Europe’s best shale prospects, but Exxon’s result supports our caution on achieving material near- term volumes."
‘Technological Problem’
“If we look at the experience from the U.S. or Canada, no single well can provide the answer if the basin has potential or not,” he said. “Low flows seem to be a technological problem.”
Smaller Explorers
Smaller explorers such as EOG Resources Inc. (EOG), Chesapeake Energy Corp. (CHK) and Range Resources Corp. (RRC) came to dominate the U.S. shale industry by default as the biggest international companies focused on locating billion-barrel offshore crude fields in places like the Gulf of Mexico and West Africa.