オバマ米大統領の21日の就任演説の要旨は次の通り。(日経新聞)

 【2期目の就任】大統領就任式に集うたびに、我々は合衆国憲法の不朽の力の証人となる。我々は我が国の民主主義の誓いを確認する。この国の結束を可能にしているのは、肌の色でも信仰でも名前の起源でもないことを思い起こす。

 【米経済の再生】10年間にわたった戦争は終わりつつあり、経済の復興が始まった。米国の繁栄は中間層の双肩にかかっている。一握りの人々だけが豊かさを享受し、多くの人がかろうじて生活しているような状況で、我が国の成功はありえない。

 【財政再建と社会保障】医療費と財政赤字を減らすためには厳しい選択が必要だ。だが、米国(の繁栄)を築いてきた(高齢者の)世代をケアするか、未来を担う世代に投資するかという二者択一には反対する。自由は幸運な人々にだけ、幸福は少数の人々にだけ保証されるものではない。高齢層や低所得層向けの社会保障制度は「ただ乗り」を許すものではなく、人々が国を繁栄させるためのリスクを取れるようにするためのものだ。

 【地球温暖化】我々は気候変動という脅威に対応していく。持続可能なエネルギー源(の確保)への道のりは長く、時には困難をもたらす。しかし、米国がこの流れに逆らうことはできない。先駆者となるべきだ。

 【外交と安全保障】我々は軍事力と法の原則の下に米国民を守り、米国の価値観を守る。他の国々との違いを平和的に解決するよう試みる勇気を持つ。これからも世界中のあらゆる地域で強力な同盟の「錨(いかり)」であり続ける。我々は世界中の民主主義を支援していく。

 【今後の決意】妻や母や娘たちが努力に見合う生活を営めるようになるまで、同性愛の兄弟姉妹が法の下で平等に扱われるようになるまで、米国をチャンスのある国と信じる勤勉な移民たちを受け入れるより良い方策を見つけるまで、我々の旅は終わらない。子どもたちがいつでも安全を感じられるようになるまで、旅は終わらない。

 生命や自由、幸福の追求といった言葉や権利、価値観をすべての国民のために実現することが、我々の世代の役目だ。絶対主義を理念と取り違えたり、政治を見せ物にしたり、中傷を合理的な議論であるかのように扱うべきではない。我々の仕事が不完全になるとわかっていても、行動しなければならない。

<映像> https://www.youtube.com/watch?v=Hwqz2TPv3y8
<英文> http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887324439704578256301037516338.html
オバマ米大統領就任演説全文(日本語)
 議長、副大統領、議員の方々、そして米国の大統領夫人(ファーストレディー)。
 わたしが今夜、ここに来たのは、偉大な議場にいる選ばれた男女の前で演説を行うためだけではなく、わたしたちを選び、ここに送った人々に率直に語りかけるためだ。

 今(演説を)見ている多くの米国民、そしてすべての人々にとって、米国の経済状況は懸念としてのしかかっていることだろう。まさにそうなのだ。もし、あなた本人がこの景気後退の影響を受けていないとしても、友人や隣人、家族の一員、あなたの周囲の誰かが影響を受けていることだろう。わたしたちの経済が危機にあることは、もう統計を聞かなくても分かっているはずだ。なぜなら、あなたが日々直面していることだからだ。あなたが胸に抱え、眠れぬ夜を過ごしている、その元凶だ。定年まで勤めようと思っていたのに、失ってしまった職。夢を懸けた事業は今、か細い糸につり下がっている。あなたの子どもは、大学の合格通知を封筒の中に戻さざるを得なかった。この不況の衝撃は本物であり、そこかしこにあるのだ。

 経済が衰退したかもしれないと自信が揺らぎ、われわれは困難で不確かな時代に生きている。だが今夜、すべての米国人に知っていてほしいことがある。

 われわれは祖国を立て直し、再生し、米国が以前より強力な国家として再浮上するのだと。

 この危機の深刻さが、この国の運命を決めるわけではない。われわれの問題に対する答えは、われわれの手の届くところにある。われわれの研究所や大学、農場や工場、起業家の創意や世界で最も勤勉な国民の誇りの中にこそ、答えは存在する。米国を人類史上最も強力な進歩と繁栄の力にしたこれらの資質を、われわれはまだ十分持っている。力を合わせ、われわれが直面する難題に大胆に立ち向かい、未来に対する責任を再び引き受けることが今、米国に求められている。

 もしわれわれが、われわれ自身に対して正直であるなら、われわれは政府として、そして国民として、あまりにも長期間にわたって、これらの責任を満たしてこなかったことを認めるだろう。誰かを非難したり、後ろを振り返るためにこんなことを言うわけではない。現在の状況にどのように立ち至ったかを理解することでしか、苦境を脱することはできないのだ。

 われわれの経済は一夜にして衰退に向かったわけではない。問題のすべてが住宅市場の崩壊や株式市場の沈没とともに始まったわけでもない。われわれは、生き残りの鍵は新たなエネルギー源を見いだすことができるかどうかにかかっているということを何十年も前から知っていた。にもかかわらず、われわれは以前にも増して多量の石油を輸入している。医療費は毎年、ますます多額の貯蓄を食いつぶしている。われわれの子どもたちはグローバル化する経済の中で、職を求めて競争することになるだろう。そのための備えができていない学校があまりにも多い。そして、これらすべての問題が解決されていないのに、われわれはかつてない規模で、個人として、そして政府を通じて支出を重ね、債務を増やしているのだ。

 言い換えれば、われわれが生きてきた時代には、長期的な繁栄よりも目先の利益が称賛されすぎた。われわれは次の支払い、次の四半期、あるいは次の選挙のことばかりを考え、その先のことを考えなかった。黒字は富める者たちにさらにお金を与える口実となり、将来に向けた投資はしなかった。手っ取り早く利益を手にするために規制は骨抜きにされ、健全な市場は失われた。銀行や金融会社は悪質なローンを押し通し、人々は買えるはずがないと分かっていながら住宅を購入した。本来欠かせない議論や困難な決断は、先延ばしにされてきた。

 その総決算の日が来た。未来への責任を引き受ける日が来たのだ。

 経済を再生させるためだけではなく、継続する繁栄の基礎を築くために、今こそ大胆かつ賢明に行動する時だ。われわれは、財政赤字削減という厳しい選択をする。それでも雇用を創出し、融資を再開させ、経済を成長させるエネルギーや医療、教育などの分野に投資する時だ。それがわたしの経済政策であり、今夜、皆さんにお話ししたい。

 雇用から始める。

 わたしは就任してただちに議会に対してプレジデンツデー(2月16日の祝日)までに、人々が仕事に戻り収入を得られるための大型景気対策法案を送るよう要請した。「大きな政府」を信じているからではない。われわれが受け継いだ巨大な負債を忘れてしまったからでもない。わたしが行動を求めたのは、そうしなければさらに多くの職が失われ、より多くの試練を生み出したかもしれないからだ。事実、行動しなければ今後何年にもわたる経済成長の鈍化を確実にし、長期の赤字を悪化させていたかもしれない。わたしが素早い行動を推し進めたのは、そのためだ。そして今夜、わたしは議会が結果を生み出したことに感謝し、大型景気対策法が成立したことを喜んでいる。

 今後2年間、この計画は350万の雇用を守り、あるいは創出する。それらの雇用の90%以上は民間部門である。道路や橋の再建や、風力タービンやソーラーパネルの建設、ブロードバンドを敷設し大量輸送機関を拡充するなどの仕事だ。

 この計画により、職を失わずに子どもたちを教育することができる教師がいる。介護従事者らは病気の人たちの世話を続けることができる。ミネアポリスの街角には今夜も57人の警察官が働いている。なぜならこの計画が、警察署が実施しようとしていた一時解雇を食い止めたからだ。

 この計画によって、米国の95%の勤労世帯が減税を受ける。この減税は4月1日以降の給料で確認できるだろう。

 この計画によって、授業料支払いに苦しむ家庭は大学4年間で2500ドルの減税を受ける。そして、この景気後退で職を失った米国人は拡充された失業保険や継続した公的医療保険を受け、嵐をしのげるだろう。

 わたしは、この議場にいる人や自宅で見ている人の中に、この計画がうまくいくかどうか懐疑的な人がいるのを知っている。わたしはそれを理解する。ここワシントンで、善意がいかに早く公約破りや無駄遣いに変わるかをわれわれは見てきた。これほどの規模の計画には、正しく遂行するための巨大な責任が伴う。

 だからこそ、バイデン副大統領に困難で、前例のない監督役を担うよう依頼したのだ。ジョー(バイデン副大統領)をこけにすることなど誰もできないのだから。全閣僚と同様に、全国の市長、知事に対し、1ドルごとの支出についてわたしと米国民に説明する責任があると伝えてある。あらゆる浪費や不正を見つけ出すことができる有能で積極的な監督官を指名した。われわれは、「政府再生」と名付けた新たなウェブサイトを作った。そこでは、全国民が彼らの税金がどのように使われているか確認することができる。

 われわれが取り組む再生計画は米経済を軌道に戻すための最初の一歩だ。しかし、それは最初の一歩にすぎない。たとえこの計画を順調に実行できたとしても、金融システムを弱体化させてきた信用危機を解消することなくして、真の再生はありえないのだ。

 今夜、この問題についてわたしは平易かつ正直に話をしたい。全国民とその家族の暮らしに直接影響することなのだと知ってもらいたい。全土の銀行に貯蓄している資金が安全で、あなた方の保険が保証されていると知ってほしい。そしてわれわれの金融システムは依然として信頼の置けるものだと分かってほしい。それは懸念材料ではないのだ。

 懸念すべきは、この国の貸し出しを再開しなければ、事が始まる前に再生は頓挫することになるということだ。

 ご存じの通り、資金の流れは経済の活力源である。融資を受ける能力はすなわち、住宅から車、大学教育に至るまで、あらゆるものを購入する際に、いかに資金を都合するかということを意味する。いかに商店が陳列棚に商品を仕入れ、農場が機材を購入し、企業が人件費をつくり出すかを意味する。

 しかし、あるべき資金の流れが止まってしまった。住宅ローン問題に端を発した不良債権が多くの銀行の帳簿上に流れ込んだ。負債が膨らみ、信用を失っていったことで、こうした銀行は現在、家庭や企業に融資をしたり、銀行間同士で資金を融通し合うことに消極的になっている。融資が途絶えると、家族は家や車を買うことができなくなる。企業は人員削減の実行を強いられる。われわれの経済はさらに苦しみ、資金はさらに枯渇してしまう。

 こうした破滅的なサイクルを打破し、自信を取り戻し、融資を再開するために、われわれの政権は迅速かつ攻撃的に行動しているのだ。

 われわれはさまざまな方法で行動する。第1に、われわれは融資のための新しい基金をつくっている。この基金は、この経済を動かしている消費者や起業家たちに対する自動車や教育融資のほか、中小企業を対象とした融資を支援するための最大の努力を象徴するものだ。

 次に、住宅対策にも着手した。この政策によって、持ち家を失う危機に直面する家庭の月々の住宅ローン返済額を軽減し、ローンの借り換えが可能になった。この計画は投機筋や、身の丈に合わない家を購入した隣人を助けるのではない。住宅の価値の減少にもがく多くの米国人を助けるのだ。彼らは低金利の恩恵を被ることができるし、この計画によって金利の軽減がもたらされた。ローンの借り換えによって平均的な家庭が年間2000ドル近くを節約することが可能だ。

 第3に、米国人が頼みとする大手銀行がさらに厳しい状況に直面する事態となっても、貸し出しをするための十分な信頼と資金を得られるよう、われわれは連邦政府の全精力を傾ける。大手銀行が深刻な問題を抱えていることが分かったときは、銀行の責任を明らかにし、必要な修正を求め、バランスシートを適正化するよう支援し、力強く存続可能で、国民と経済に仕える強い組織の継続性を確保することができるだろう。

 銀行を救済し、無謀な決定について説明責任を問わない手法を取れば、ウォールストリートは安心だろう。しかし、それでは問題の解決にならない。われわれの目的は、国民と事業への貸し出しを再開し、危機が終わる日を早めることにあるのだ。

 わたしは、これらの銀行が支援を受けるに当たり、十分な説明責任を果たさせるようにするつもりだ。そして銀行は今回、税金が米国の納税者への貸し出しにより多く充てられることを明確に実証せねばならない。CEO(最高経営責任者)たちは今回、自分の給料を水増ししたり、ぜいたくな衣服を買ったり、自家用ジェット機に身を隠したりするために納税者の金を使うことはできないのだ。そんな時代は終わった。

 ただ、この計画には連邦政府からの多額の財源が必要で、それは恐らくわれわれが既に割り当てた額よりも多くなるだろう。だが、行動のための費用が増す一方で、何もしないことへの代償はさらに甚大になると確信を持って言える。そうしなければ経済は数カ月、数年でなく、恐らく10年間にわたって停滞することになる。それは財政赤字にとり、ビジネスにとり、あなた方にとり、次の世代にとり、より悪い結果をもたらすだろう。わたしはそんなことをさせはしない。

 前政権が議会に対し苦境にある銀行への支援を求めた際、民主党員も共和党員も同じように前政権の不手際とそれに伴う結果に激怒したことを、わたしは理解している。米国の納税者も同じだったし、わたしも同じだった。

 だから、誰もがある程度は銀行の間違った判断のため苦しんでいる時に、今すぐ銀行を助けることがいかに不人気であるか知っている。わたしはそのことを理解していると約束する。

 しかし、危機の時に怒りに任せた政権運営や、時の政治に屈するわけにはいかないということも知っている。わたしの職務、わたしたちの職務は、問題を解決することだ。責務を負っていることを認識し、国を治めること。ウォールストリート(金融機関)の重役たちに報いるためには1銭も使うつもりはない。だが、社員に給与を払えなくなった中小企業、貯金をしてきたのに住宅ローンを組めない家庭は何としてでも支援する。このことなのだ。銀行を救済することではなく、人々を救済することなのだ。融資を再び受けられるようになれば、若者の家庭が新居を買えるようになる。どこかの会社がその家を建てるために労働者を雇う。労働者は現金を得て、ローンを組めれば、車を買ったり、事業を始めることもできるだろう。投資家は市場に戻り、米国の家庭は退職後も安心して余生を迎えられるようになるだろう。ゆっくりとだが確実に、信用は戻り経済は再生する。

 従って、議会には、わたしとともに必要な政策を実行してほしい。終わりのない不況に国民を追いやってはならないからだ。そして、これ程の危機が2度と起こらないようにするため、時代遅れとなった規制を刷新するための立法を速やかに進めてほしい。金融市場で、やる気と革新性が報いられ、近道や不正が罰せられるようにするため、強力で、常識に基づいたルールを導入すべき時だ。

 景気対策、金融安定化策は、経済を短期的に立て直すために進めている当面の措置だ。だが、米国経済の強さを完全に取り戻すための唯一の道は、雇用、新しい産業、世界との競争力を生み出すことにつながる長期的な投資を行うことだ。今世紀を、もう一つの米国の世紀にする唯一の道は、石油依存と高額の公的医療保険の代償に向き合えるかどうかだ。子どもらは山のような負債を引き継ぐことになり、学校は子どもらを教育できていない。これが、わたしたちの責務だ。

 近くわたしは議会に予算教書を提示する。われわれはしばしば、この教書を単なる紙の上の数字や長々とした計画リストと見なしてきた。わたしはこの教書を違う見方でとらえる。わたしは米国の展望、われわれの将来の青写真ととらえる。

 わたしの予算案ですべての問題を解決しようとするものではないし、すべての問題を扱うわけでもない。1兆ドルの赤字や金融危機、手痛い景気後退など、われわれが受け継いだ純然たる現実が反映されている。

 こうした現実下では、民主党員であれ共和党員であれこの議場の誰しもが、いくつかの優先事項に予算をつけられず犠牲にしなければならないだろう。それにはわたしも含まれる。

 だからといって、われわれの長期的な課題を無視する余裕があるという意味ではない。わたしは、問題が自然に解決するという見方を認めない。われわれ共通の繁栄のための基盤を築くのに、政府の役割は一切ないという見方を認めない。

 なぜなら歴史の教訓は異なるからだ。経済が激変したり転換した時はいつも、わが国は大胆な行動と大きな思想を持って立ち向かってきたことを歴史はわれわれに想起させる。南北戦争の最中、われわれは一方の海岸から他方の海岸に向かう鉄道路線を敷き、商業と産業を活性化させた。産業革命の混迷の中から公立高校のシステムが生まれ、市民は新時代に向けて準備することができた。戦争と不況の後、復員兵援護法による大学教育で、歴史上最大の中産階級が生まれた。そして自由への苦闘が高速道路網につながり、米国人を月に送り、今日の世界を形作る技術の爆発的進歩を生んだ。

 どんな時でも政府が民間企業に取って代わることはなかった。政府は民間企業を刺激する触媒の役割を果たしてきたのだ。何千もの起業家や新たな事業が順応し、繁栄するための条件を政府はつくり出してきた。

 われわれは危機の中に希望を見いだし、苦難の中から好機を引き出してきた国民だ。われわれは再びそのような国民であらねばならない。だからこそ不必要な計画を刈り込みながらも、私が提案する予算は、将来の経済に死活的に重要な3つの分野に投資するのだ。その3つとはエネルギーと医療、そして教育だ。

 まずエネルギーから始めよう。

 クリーンで再生可能なエネルギーの力を活用する国こそが、21世紀を主導する。エネルギー効率がいい経済をつくるため、史上最大の取り組みを表明したのは中国だ。われわれは太陽光発電を発明したが、製品化ではドイツや日本に負けている。われわれの工場では新型の(家庭用電源で充電できる)プラグイン・ハイブリッド車が生産されるが、動力のバッテリーは韓国製だ。

 雇用が創出され新しい産業が根付いていくのがわれわれの国の外だという事態は、わたしには受け入れられない。皆さんもそうだろう。今こそ米国が再び先頭に立つときだ。

 経済再生政策の導入により、この国の再生可能なエネルギーの供給量は今後3年間で2倍になる。また、われわれは基礎研究に米国史上最大の投資をする。エネルギー分野で新たな発見が増えるだけでなく、薬学や科学、工学分野でも飛躍的な前進があるだろう。

 近く、新しいエネルギーをもたらす何千マイルもの配電網を国中に整備する。住宅やビルのエネルギー効率を高め、何十億ドルもの節約ができるようにする。

 しかし、われわれの経済を真に変革し、安全保障を守り、気候変動による破壊から地球を救うためには、究極的にはクリーンで再生可能なエネルギーを利潤性のあるものにしなければならない。このためわたしは議会に対し、市場に根差した二酸化炭素(CO2)規制と、国内でのさらなる再生可能エネルギーの生産につながる法案を提出するよう求めた。そしてその新機軸を支えるため、風力発電やソーラー発電の技術開発などのために年間150億ドルを投資する。この投資にはバイオ燃料やクリーンな石炭、米国産の燃費効率の良い車やトラックの開発も含まれる。

 われわれの自動車産業が、長年にわたる誤った経営判断や世界的な不況によりがけっぷちに立たされていることは皆が承知している。われわれは自らの悪い行いから業界を保護すべきでないし、そうするつもりもない。しかし、競争力があり勝利できる、改組され、再構築された自動車産業という目標をわれわれは抱いている。数百万人の雇用がそこに懸かっている。多くの地域社会の頼みの綱でもある。そして私は自動車を発明した国家が、そこから立ち去ることはできないと信じている。

 いずれも犠牲を伴わないわけではなく、簡単でもない。しかし、ここは米国だ。われわれは簡単なことはやらない。この国を前進させるために必要なことを行うのだ。

 同じ理由で、われわれは医療分野の破壊的なコストの問題にも力を注がなければならない。これは米国で30秒ごとに破産を生み出す原因となっている。年末までに、150万人の米国民が家を失うかもしれない。過去8年間に保険料は賃金の4倍の早さで高騰してきた。その間、毎年100万人以上の米国民が医療保険を失ってきた。これは小さな会社が営業をやめ、企業が海外に雇用を求める大きな原因の一つとなってきた。そして、われわれの予算の最大かつ最速に膨れ上がっている部分でもある。

 こうした事実を考慮すると、われわれはもはや公的医療保険の改革を止めておく余裕はない。

 既にこの30日間で、医療保険改革の目標推進のため、過去10年よりも多くのことを成し遂げた。フルタイムで働く親の子供1100万人に医療保険を与える法律が議会を通過したのは、新議会発足から間もなくのことだった。われわれの景気対策は、診療記録を電子化するとともに、間違いを減らし、費用を削減し、プライバシーを確保し、生命を救うための新技術導入に投資する。

 がんの治療法を探求し、ほぼすべての米国人の生命に影響を与えてきた病を克服するための新たな取り組みを始める。予防治療に向けた過去最大の投資となる。国民を健康に保ち費用を抑制するための最も良い方法の一つだからだ。

 この予算はこうした改革を積み重ねたものだ。包括的医療保険改革に向けた歴史的な約束が含まれる。すべての国民のための質が高く、手ごろな医療保険を与えるという原則の第一歩だ。長年の懸案だった制度の効率化によって、約束の一部は実現できる。今後の財政赤字を減らすために、われわれが取らなければならない手段だ。

 改革達成の方法についてさまざまな意見や考えがあるだろう。この問題に取り組むため、来週、企業人と労働者、医師と公的医療保険関係者、民主党員と共和党員を集めるのはこのためだ。

 容易な道のりだという幻想は抱いていない。困難ではある。ルーズベルト大統領が初めて改革を呼び掛けてから1世紀近くがたって、医療保険のコストが米経済や米国の良心を圧迫してきた。医療保険改革は待てないし、待ってはならない。1年の猶予もないのだ。

 言及すべき第三の課題は、米国の教育の将来性を喫緊に広げる必要があるということだ。

 もっとも有用な技術は知識であるという世界経済においては、優れた教育はもはや単にチャンスをつかむための手段ではない。それは必須条件だ。

 現在、急成長を遂げている職種の4分の3について言えば、高校卒業証書以上のものが必要とされる。しかし、半数を超える市民が得てきた教育はその(高校卒業)程度のものだ。あらゆる産業国家の中でも、われわれの高校中退率は最も高い部類に入る。そして学生の半数が大学に入っても、最後まで終えることができない。

 これは、衰退した経済を克服するための処方せんだ。今日われわれを模範としている国家が、明日にはわれわれを打ち負かすだろう。だからこそ、すべての子どもたちが生まれた日から仕事を始めるその日まで、完全で競争に耐え得る教育を受けることができるようにすることがこの政権の目標なのだ。それが米国の子どもたちに対する約束なのだ。

 すでにわれわれは大型景気対策法を通して教育分野への歴史的な投資を行った。われわれは幼児期教育を劇的に拡張させた。今後も教育の質を改善していく。なぜなら、最も発達に寄与する知識はこうした人生の初期に生まれることをわれわれは知っているからだ。

 われわれは大学の受け入れ人数を700万人近く増やした。そしてわれわれは、子どもたちの進歩を遅らせるような痛みを伴う予算の削減や教師の人員削減を避けるため、必要な財源を供給した。

 しかし、われわれは、学校が単にさらなる財源を求めているだけではないことを知っている。さらなる改革を必要としているのだ。このため、今回の予算教書は教師の実績に対する奨励金を創設した。前進への道であり、成功への報酬だ。

 われわれは学校が高い水準を満たし、学力の差をなくすために既に貢献している革新的プログラムに投資する。そして(公設民営の)チャータースクールへの関与を広げていく。

 こうしたシステムを機能させるのは、われわれ政治家や教育者の責任だ。しかし、システムに参加するすべての市民の責任でもある。そして今夜、わたしはすべての米国民に対し、高等教育や職業訓練のために1年か1年強の時間をささげるよう求める。(生涯教育などを行う)コミュニティーカレッジでもいいし、4年制大学や職業訓練、見習い実習でもいい。

 しかし、訓練がどのようなものであろうとも、すべての米国民が高校の卒業証書以上のものを得る必要があるだろう。高校を中退するという選択肢はもはやなくなる。それはあなたたち自身を見捨てるだけでなく、あなたの国を見捨てることにもなる。この国はすべての米国民の能力を必要とし、評価している。

 あなたたちが大学を卒業し、新しい目標を見つけるために必要な支援をわたしたちが提供しているのは、このためなのだ。2020年までに米国は再び、大学卒業者の割合が世界で最も高くなるだろう。

 教えることの価値はこれまでになく上がっている。もし隣近所のボランティアや地域への還元、国への奉仕をしようと考えるなら、あなたがより高い教育を受けられるようにしよう。現在と、未来の世代に向けた国家奉仕の精神を取り戻すために、オリン・ハッチ上院議員(共和党)や、国のために何ができるのかを考え続けてきた米国人、エドワード・ケネディ上院議員(民主党)の名を冠した超党派の法律をわたしに送付するよう、議会に要請する。

 こうした教育政策は子どもたちに機会の扉を開く。しかし、子どもたちが確実に歩んでいけるかどうかは、わたしたちにかかっている。結局、母親や父親の代わりができる政策はないのだ。保護者と教職員の会議に出席したり、夕食後やテレビを消した後、ビデオゲームを終えた後に宿題を手伝ったり、子どもに読み聞かせたりするのだから。単に大統領としてだけではなく、1人の父親として、子どもたちの教育に対する責任は家庭から始まるべきだと主張する。

 もちろん、子どもたちに対するほかの責任もある。それは、子どもたちが払うことのできない借金をかぶせることはないと確約する責任である。われわれは赤字を引き継ぎ、危機に直面し、長い時間をかけた取り組みをしなければならない。経済が回復すれば赤字を減らすように取り組むと確約することが、これまでになく重要なことである。

 わたしは特定の条件なしに景気対策計画が通過したことを誇りに思う。来年は最も重要な国の優先課題にのみドルが費やされることを保証する予算案を通過させたい。

 (議会指導部らと超党派で財政再建を話し合う)昨日の「財政サミット」で、わたしは1期目(の4年間)が終わるまでに財政赤字を半減させることを約束した。わたしの政権は、無駄で効果のない施策を削るため連邦予算の詳細な見直しを始めた。ご想像の通り、時間がかかる作業だ。われわれは大きなものから手を付け始めており、既に今後10年間で2兆ドルを節減できる見通しだ。

 今回の予算では効果のない教育プログラムをやめ、大規模農業への不必要な直接支払いをやめる。イラクで何10億ドルも無駄にした随意契約をやめ、もはや使わない冷戦時代の兵器システムに支出しないよう国防予算を見直す。高齢者の健康増進に寄与しない医療制度の無駄や不正、乱用を根絶し、海外に雇用を流出させる企業への税優遇策を最終的に廃止し、税制の公平さとバランス感覚を取り戻す。

 将来の借金から子どもたちを守るため、米国民の2%に当たる最裕福層への税優遇策もやめる。こうした政策は米国民への大規模増税を意味するというおなじみの主張を繰り返し聞くことになるかもしれないが、ここで明確しておきたい。もし家族の年収が25万ドル以下なら一文たりとも税金は上がらない。繰り返す、一文たりともだ。事実、大型景気対策法では減税が実施される。そう、95%の勤労者世帯にとって減税になる。(こうした減税策は)目の前にある。

 財政の長期的健全性を維持するためには、増大する公的医療保険と社会保障(公的年金)費用にも焦点を当てなければならない。包括的な医療制度改革が、公的医療保険を強化する最善の方策だ。無税の貯蓄口座制度を創設する一方で、公的年金にもどのようにして同様の措置をとれるのか話し合いを始めなければならない。

 最後に、わたしたちは信用の欠如にも苦しんでいるので、予算には誠実さと透明性を持たせるように誓約した。だからこそ、この予算は10年先を考慮に入れ、古いルールの下に置かれていた歳出に説明を付けている。そして、初めてイラクとアフガニスタンでの戦闘の費用を取り込んだ。戦時体制は7年間に及んでいる。その費用はもはや隠されることはない。

 わたしたちは両戦争の政策を注意深く再検討している。間もなく、イラクをその国民に委ね、責任を持ってこの戦争を終わらせる方策を発表する。

 国際テロ組織アルカイダを打ち負かし過激主義と闘うため、友好国、同盟国とともに包括的なアフガン、パキスタン戦略を練り上げる。地球を半周した場所にある安全地帯で、テロリストが米国民を狙う計画を進めることなど許されないからだ。

 今夜、われわれがここに集まっている時、制服を着た米国民が海外で監視に当たり、派遣される準備をしている者もいる。彼らと彼らの不在に耐えている家族たちに対し、米国民は団結して一つのメッセージを送ろう。われわれはあなた方の奉仕を誇りに思い、あなた方の犠牲に鼓舞され、あなた方にはわれわれの揺るぎない支援があるのだというメッセージを。軍の負担を軽減するため、わたしの予算教書では兵士や海兵隊員の増員を盛り込んでいる。奉仕する者への神聖な信頼を維持するため、彼らの給料を上げ、退役軍人への医療保険や給付金を増額するつもりだ。

 過激主義を克服するには、われわれの部隊が守っている価値を維持することに用心深くならなければならない。なぜなら世界で米国軍より強力な軍隊はないからだ。だからわたしは(キューバの)グアンタナモ米海軍基地のテロ容疑者収容施設の閉鎖を命じたのであり、捕まっているテロリストたちに迅速で信頼できる法の裁きを求めるつもりだ。われわれは価値観を実行することで弱くなることはない。安全になり、より強くなるのだ。だからわたしは本日、ここに立ち、例外やあいまいな表現なしに、米国は拷問をしないと言うことができる。

 言葉と行いによって、われわれは世界に対し、新たな関与の時代が始まったのだということを示している。米国だけで今世紀の脅威に対応することはできず、また世界は米国抜きで脅威に対応することはできないということをわれわれは知っている。われわれは交渉のテーブルを避けることはできないし、われわれを傷つけ得る敵や武力を無視することもできない。その代わり自信と公正さをもって前進することが求められている。深刻な時代がそれを要求しているのだ。

 イスラエルとその周辺国の安全と永続的な平和に向けた進展を求めて、われわれは努力を続けるため特使を任命した。テロや核拡散、流行病、サイバースペースの脅威、深刻な貧困などの21世紀の難題に対応するため、われわれは旧来の同盟関係を強化し、新たな同盟関係を築き、国力のすべてを使うだろう。

 世界的規模の経済危機に対処するため、世界の20カ国・地域(G20)と協力している。金融システムへの信頼を回復し、保護主義拡大の可能性を回避し、世界市場で米国製品への需要を喚起するためだ。力強い経済を持つために世界は米国に依存しているし、米経済も世界経済の強さに依存しているからだ。

 歴史の岐路に立つ今、全世界のあらゆる人々がいま一度われわれを注視している。米国がこの瞬間に何をするかを注視し、われわれが先導するのを待っているのだ。

 今夜集まった私たちには、特別な事態を取り仕切ることが求められている。大変な重責ではあるが、素晴らしい特権でもある。米国でこうした重責と特権を委ねられた世代は一握りだけだ。よかれあしかれ、世界を形作る力はわれわれの手の内にある。

 こうした真理を見失い、世をすねて疑いを抱き、ささいな事にこだわるのは簡単だ。

 しかし、希望は思わぬところで見つかるということも、わたしは人生の中で学んできた。大きな権力や名声があるところではなく、ごく普通の米国人が抱く夢や大志から、アイデアの源が見つかるのだ。

 フロリダの銀行の頭取、レナード・アベスさんのことを思う。彼は銀行から受け取った6000万ドルのボーナスを、399人の全行員と72人の元行員に分け与えたという。自ら公表はしなかったが、地元紙が取り上げた際、彼は「自分が7歳の時から知っている人たちもいる。自分だけがお金を手にするのはいい気分がしなかった」とだけ語った。

 竜巻で完全に破壊され、住民の手で再建が進むカンザス州グリーンズバーグのことを思う。クリーンなエネルギーは地域全体に力を与え、一度はがれきに覆われてしまった場所にも雇用やビジネスの機会をもたらす。グリーンズバーグはそれを世界に示した。「大変な悲劇だった」。住民の再建を手助けしている男性は語った。「しかし、ここの住民たちは、思わぬ好機にも恵まれたことを理解している」

 そして、わたしが訪れたサウスカロライナ州ディロンの学校の少女、ティシェーマ・ベシアさんのことを思う。彼女の学校では天井に穴が開き、壁のペンキははげ落ち、教室のすぐ脇を列車が走るために授業を1日に6回も中断しなければならない。学校はあきらめていると聞かされたが、ある日の放課後、彼女は図書館に行き、ここにいる皆さんにあてて手紙を書き上げた。校長先生に切手代をもらい、手紙で助けを求めた。「わたしたち学生は法律家や医師、皆さんのような議員に、そしていつの日か大統領になろうと努力しています。わたしたちはサウスカロライナ州だけではなく、世界に変化をもたらすことができるのです。簡単にあきらめたりしません」

 われわれはあきらめない。

 これらの言葉や逸話は、われわれをこの場所に送り出した人々の精神を物語っている。彼らは最も苦しいときであっても、最も困難な状況にあっても、寛容の精神や回復力、良識、そして忍耐する決意があることをわれわれに教えている。将来と繁栄に対する責任を担う意欲である。

 彼らの決意をわれわれは刺激とすべきだ。彼らの懸念はわれわれの大義である。そしてわれわれは彼らと国民すべてに、目の前にある課題に対して皆が平等であることを示さなければならない。

 われわれが今のところすべての点で意見が一致しているわけではないことは承知している。将来道を分かつときも確実にあるだろう。だが今晩ここに座っている米国人の1人1人が国を愛し、国の成功を願っていることも知っている。それが今後数カ月のすべての議論の出発点であり、議論が終わった後で立ち戻る場所であるべきだ。それこそが国民がわれわれに合意点を見いだすことを求めている礎である。

 われわれが協力し、この国を危機の深みから引き上げるならば、また人々を仕事に復帰させ繁栄の原動力を再始動させるなら、恐れずにこの時代の挑戦に立ち向かい、あきらめることのない米国の永続する精神を奮い起こすなら、いまから何年も後の将来、子どもたちがその子どもたちにあの時にわれわれが行動したと伝えることができるだろう。まさにこの議場に刻まれている言葉の通りである。「価値のあることは記憶される」。ありがとう。皆さんに神のご加護を。そしてアメリカ合衆国に神のご加護を。

(共同)